月曜ドリンク
五月最後の土曜日には約七十匹釣った。半数がキスで、残りはグチとアイナメ。ガシラニ匹と小さなカレイ十枚は員数外。
あわただしい釣りだった。毒針を持つ姫（葉）オコゼがたびたび釣れて、足で押さえぺンチで挟み海へ戻す。持参のビールを飲む間が無く、一旦竿を納めて休憩した。休憩の間に、イケスの魚を数匹タモですくい、背開きにして船首に並べ干物にした。海水の塩分だけでは干物に塩味不足かと思ったが、後で食べたらこれはこれで結構な味だった。「塩」というより「潮」の味だ。干物はグチ・アイナメ・キス、の三種類。五月晴れの太陽をたっぷり浴びた正真正銘の天然干物。
この日の我が家のメーンディシュはこの干物。添え菜のサラダとオードブルは自宅裏庭のフキと地堀りタケノコ。五月を丸ごと食っているようなもの。
釣果は例によってご近所へおすそ分けした。隣家には干物も添えた。女房がお届けしたが、
「へぇ〜、この干物もご主人が釣ったの？」と、
隣家の奥さん怪訝な顔だったらしい。
「わたし、ちゃんと言うといたからね『ボートで主人が料理して干したんよ』って、」と女房。
「へぇ〜、ご主人はお料理もするの？」
隣家の奥さん、ますます怪訝な顔だったとか。
◇ ◇ ◇
その翌日、日曜日のこと、前日と同じ場所にアンカーを下ろして釣っていたら、艇の左舷前方約十五メーターで不穏な波音がした。見ると波間から背ヒレが突き出ている。ゆっくりと移動していた。フカだ。体長約ニメーターか。ヒレは静かに没し、しばらく後に又位置を換えて現れる。大慌てでカメラを向けた。ゆったり泳いでいるようでも写真に撮ろうとするともう間に合わぬ。
釣果は相変わらずキスが多かった。三十数匹。カレイニ枚の内大きな方は三十五ｾﾝﾁ 。座布団と言うには少し恥ずかしい。場所は、高砂沖。上島の南約一ｷﾛ。黄金の瀬南はずれ付近。潮は長潮。午前九時から午後三時までの釣りだった。写真を撮ろうとしたが、イケスから揚げたら魚が跳ね回って写真の視野に収まらない。お陀仏後に、山盛りにかためて撮影した。姫オコゼがたびたび釣れて邪魔ッケだった。
◇ ◇ ◇
週休二日の土日を二日とも釣りまくると月曜日の出勤がおっくうでたまらない。
今朝、月曜日は元気づけの精力ドリンク剤を飲んで出勤した。
土・日が凪続きだと体力が続かない。若い頃はそうでもなかった。だが、いつの頃からか月曜日は朝のドリンク剤が欠かせない。女房が、
「そんなにシンドかったら、行くのやめたら？」と言う。
釣り行きのことではない。出勤を止したらとの意である。で、私は、 「月給を差し止められたらどうするのや」と、
彼女の心得違いをさとし、かつ自分も励ましつつ出勤する。
梅雨近し 釣りぼけ顔に ドリンク剤